08 - 22 - 2008

世界めぐり高めた音楽性 渡辺貞夫さん

Sadao2:mori.JPG 29日からSFヨシズで公演する渡辺貞夫さん

今なお追求する自分の音
29~31日、SFヨシズでライブ

 活動歴は50年以上に及び、日本国内外で高く評価されているジャズ・サクソホン奏者の渡辺貞夫さんが、サンフランシスコをはじめ、ロサンゼルス、サンディエゴなど6都市を回る全米ツアーを行う。日本人メンバーと共に訪米するのは14年ぶりといい、〃ナベサダ〃の魅力をたっぷりと楽しめる演奏が期待できる。今回のツアーや、今後の活動の抱負について話を聞いた。(森廣陽子)

—日本人メンバーと米ツアーをするのは14年ぶりと聞いた

 米ツアーは2、3年おきにやっていますが、旅費がかかるので、これまでは僕一人で行き、その土地のミュージシャンと演奏していました。リハーサル時間が十分に取れないので自分のオリジナル曲とスタンダード曲と半々ぐらいの演奏でした。今回は、僕のオリジナル曲をたっぷりと聞いてもらいます。全日空の協賛を受けているので、全員日本から連れて行けることになりました。感謝しています。

—SFのヨシズでの演奏は?

 今回が初めてです。青写真を見せてもらったので、行くのが楽しみです。

—SFはどんな印象?

 僕が初めてSFに行ったのが1965年。たくさん思い出がある大好きな町です。当時、東洋人のジャズプレーヤーは、僕と秋吉敏子さんぐらいしかいなかったので、珍しがって会いにきてくれて、それ以来親しくしている二世の友達がたくさんいます。(北米毎日新聞社の現理事)清水宏さんとか、マツモト・マサシさんとか…。だから60年代末のころは、SFを拠点に行ったり来たりしていた時期があったんですよ。二世の友達は必ず来てくれると思います。

—SFのどこに拠点を?

 (ノースビーチの)ブロードウエーに「ベイズン・ストリート・ウエスト」というジャズクラブがあって、向かいに「エル・マタドール」、その横には「ジャズ・ワークショップ」というクラブがあった。ブロードウエーが、非常に元気があった時代です。ベイズン…の上のホテルが、週16ドルで一番安かったので、そこにずっと泊まっていました。エル…では、セルジオ・メンデスが「ブラジル65」というバンドで演奏していて、休み時間に彼らと交流があり、ブラジル音楽に興味を持ったんです。

—楽曲にブラジルの影響がみられるのはそのため?

 僕はもともとジャズミュージシャンですから、ビーバップから始めたわけです。でも、「ソフト・サンバ」というアルバムを出したゲイリー・マクファーランドのグループに参加して、ラテン系というか、ボサノバを演奏しました。それまでは、そういう音楽に興味がなくて、ダルな音楽だなと思っていたんですが、ゲイリーの音楽に非常に癒されたというか、それがジャズ以外の音楽に興味を持ったきっかけです。68年にブラジルに3カ月ほど滞在して、ローカルのミュージシャンとセッションしているうちにすっかりはまってしまいました。70年代は、アフリカによく行きましたから、そのリズムにも魅せられました。そういう国々、風土に対する造詣が僕の音楽に反映されていると思います。

—さまざまな国を訪問しているが、一番印象に残っているのはどこの国?

 最近ではチベットに非常に精神的な影響を受けてはまっています。

—北京五輪を機に話題になったチベット問題についてどう思う?

 ダライ・ラマ法王は暴力に対して、暴力による報復は絶対にいけない、許さなくてはならないと言う。法王のように大きく許すという、そういう気持ちになろうと思っていながら、個人的には漢民族がチベット民族を迫害している状況を目の当たりにしているので、心の中では頭に来ている。そういう矛盾、ジレンマを感じています。

—出身地の栃木県に子どもたちのリズムスクール「エスコーラ・ジャフロ(Escola Jafro)」をつくり、2005年の愛知万博や、今年7月のスペイン・サラゴサ万博で、彼らだけでなく世界の子どもたちと共演している。きっかけは?

 1996年、栃木県で行われた国民文化祭です。ブラジルの「オロドゥン(Olodum)」というサンバチームのリズムが、とてもダイナミックなのに3種類の打楽器だけでそのリズムを表現できるので、子どもたちにもぴったりだと思っていたんです。ある時、週刊新潮の掲示板のコーナーに「日本でもこんなサンバチームをつくりたい」と載せたら、NHKのディレクターから声が掛かり、国民文化祭で演奏することになりました。1年前からオロドゥンの若手を日本に呼んで練習したら、大成功。1年限りで終わらせるのはもったいないので、その後もリズムスクールを続けて今年で14年になります。
 ブラジルから毎年プロに来てもらって、那須で合宿をしている。子どもたちはよそへ出しても大丈夫なほどに、かっこ良くなったんですよ。その子たちをオロドゥンと共演させたい、というのが大きな夢です。

—コンサート先で、サンバチームとの交流は?

 SFにもアジアとブラジルのリズムをやっているグループがあると、この間聞いたので、エスコーラ・ジャフロとのジョイントコンサートを実現したいと思っています。

—万博、国際博で活躍する機会が増えているが、平和や環境保護への興味は?

 若いころから旅が多いので、自然破壊の状況とか目の当たりにして、いつも心を痛めてきました。最近そういったことが大きくクローズアップされていますよね。僕は音楽家ですから、音楽を通して出来る限りのお手伝いはしていくつもりです。

—今後の活動目標は?

 僕の原点はジャズで、サクソホンプレーヤーなので、サクソホンをバリバリ吹きたいですね。70、80年代は、一生懸命曲を書きましたけど、今は一介のプレーヤーとして吹きたい、という気持ちが強いです。自分に対する不満は山ほどあるし、技術的にも精神的にも、ずっと高い気持ちで演奏している人はいる。プロじゃなくても路上で演奏している人でも、いいなと思う人はいる。もっとサクソホンを自分のものにしたい、自分の音を追求したい、と思います。

 渡辺さんのSF公演は、市内のジャズクラブ「ヨシズ」で、8月29日(金)、30日(土)、31日(日)。29、30日は午後8時と10時の2回公演。31日は午後2時(マチネ)と、7時に公演する。チケットは、マチネ以外が30ドル。マチネ公演は大人26ドル、子ども5ドル。購入は、ウェブサイトsfyoshis.inticketing.com、またはボックスオフィス☎(415)655—5600。詳細はウェブサイトsf.yoshis.com/sf/jazzclub。
 SF以外の公演日程は次の通り。
▽9月2日(火) ロサンゼルス(Catalina Bar & Grill)▽3日(水) サンディエゴ(Anthology)▽5日(金)〜6日(土) ワシントンDC(Blues Alley)▽8日(月) ニューヨーク(Blue Note)▽9日(火) ボストン(REGATTABAR)。

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