511 名物コラム(1)
Posted in 新聞ではたいてい一面の一番下に各社各様のコラムを連載している。いわゆる三大紙の一つである朝日新聞なら「天声人語」、毎日新聞なら「余録」、読売新聞なら「編集手帳」といったぐあいにである。
そんななかで、さしずめ「天声人語」は新聞コラム界の王者だろう。他のコラムもそうだが、そこに掲載されている僅か何百字かの文章には、日々おこる事件や事故についての、あるいは昨今の政治や世相についてのちょっぴり風刺の効いた解説、感想などがつづられていて、毎朝それを読むのが一日の始まりという読者もいる。加えて、過不足ないその文章は、しばしば大学受験や就職試験のテストにも出題されるので、若い学生たちが電車内で熱心に読んでいる姿もよく見かけるのである。
当然のことながらこのコラムで取り上げられると反響も大きい。
私の営む美術館も、これまで何度か「天声人語」で話題にしてもらったことがあるのだが、記事がのった当日から問い合わせが殺到し、たちまち来館者数がアップする。最近新聞のような活字媒体は、テレビやインターネットにおされて元気がないといわれているけれども、どうしてどうして、こういう名物コラムとなるとやっぱりその実力はスゴイのである。
意外なのは、こんなに影響力をもつコラムなのに、各紙とも大体一人の執筆者が担当しているということ。「天声人語」の前任者である栗田亘さんからきいたところでは、急病やその他特別な事情でどうしても書けない日が生じた場合のために、予備の記者さんが何人か待機しているらしいのだが、そんな日はめったにないという。歴代の「天声人語」の担当者は、取材から調査、執筆までを一年三百六十五日にたった一人でやりぬいてきたというのだからおどろく。
