二流大学を卒業後、3カ月で会社を辞めフリーターで食いつなぎながら、親のすねをかじっている誠治。いつかやり直せる、そんな思いを抱えたまま、ぐだぐだと毎日を過ごしているうち、条件は悪くなるばかりで再就職もうまくいかない。一流企業に勤める父、誠一とは就職をめぐって言い合ってばかり。その間をうろたえながら行き来する母、寿美子。
第55回江戸川乱歩賞受賞作。審査員が「志が高い」と絶賛する話題作。 交通刑務所内での密室殺人という新ジャンル、かつ社会派的な要素も盛り込んでいる異色作ともいえる。非常に繊細な生活の描写には並々ならぬ力量を感じさせる。特に冒頭の刑務所内の風景、規則、人間関係を描く筆力は圧倒的。
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」について書いた上の記事に合わせたわけではないが、本書もまた、成功するためには手段を選ばないエゴや虚栄心の塊のような女と、それを羨望するあまり狂気へとおちていく女の物語。
今年の新年号で特集を組んだ「本の虫大賞」で小説部門大賞に選んだ「阪急電車」の著者、有川浩の最新刊。ちなみに、浩は「ひろ」と読む、女性作家。 OLのさやかは20代半ば。仕事に疲れて帰る道すがら、空腹のあまりこれ以上歩けなくなって、花壇の中に行き倒れている同年代の男性、イツキを見付ける。 「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか? 咬みません。躾のできたよい子です」「あらやだ。けっこういい男」
町山智浩氏との共著「オバマショック」を読んで、著者のことを知り、たまたま見かけた本書を手に取ってみた。 「歴史の岐路に立たされた人物のサイコ(精神的内面)を通してヒストリー(歴史的事実)が見える。同時にヒストリーを通してサイコが見える—」
山田詠美の最新作。 デビュー作「ベッドタイムアイズ」から続く、大人の男女関係を描いたものと、「風葬の教室」をはじめとする思春期の少年少女の繊細な気持ちを描くものの2つの系譜で作品を発表しているが、本作は後者に属しながらも、前者の原初とでもいうべき、恋愛、性愛の発芽と、それが育っていくプロセスを描く。
そのシステム、社会の中だけにいると、見えなくなってしまうことがたくさんある。だから、海外に出ると、客観的な視点が獲得できるし、比較する対象ができるので、自分が所属していた社会や動きがよく分かるようになる、というのはよくある話。
現代人の活字離れ。情報はインターネットで得て、そのせいで新聞も、本も売れない。としたら、なんてもったいないことだろうと思う。 本という形だからこそ味わえる幸せ、喜び、楽しみというのが確実にある。それを見事に作り出しているのが本書。
「トイ・ストーリー」「ファインディング・ニモ」、最近では「カールじいさんの空飛ぶ家(Up)」といったフルCGアニメを作り出し、「カール—」にいたっては3Dまで取り入れたピクサー。 そのCG制作の技術、創造力はアニメ、映画業界で最も注目を集める会社だ。だが、最初から成功を約束されていたわけではない。
世界最初の整備された先物取り引き所とされる堂島米会所が大阪に設けられたのが1730年。それから約30年後、仲買人として相場を張る吉之介は、幼なじみの藤吉が女郎と心中を図って死んだという知らせを受け、現場に駆けつける。悪童たちが入れられる寺子屋で青春時代の苦楽を共にしてきた仲間、吉之介はじめ作右衛門、善太郎、弥五郎らは一様に藤吉が心中する直前に、うれしそうな口調で「話がある」と呼び止められていた。